休業損害とは,事故がなければ得られたはずの収入を失ったという損害ですので,失業者には,原則として休業損害は認められません。
ただし,①事故が発生した時期に具体的な就職先が決まっていた場合,②具体的な就職予定がなくても,労働能力や労働の意欲があり,近い将来に就職できる可能性が高い場合には,休業損害が認められることがあります。具体的には,①の事案について,事故前に就職を申し込んでいた会社から事故後に採用の通知を受けていた事例(名古屋地判平成21年2月27日自保ジャーナル1797号19頁),②の事案について,ホテルでアルバイトをしながら専門学校のホテル学科に通い,卒業後約6か月にわたって就職活動をしていた事例(名古屋地判平成18年11月21日交民40巻6号1499頁)があります。
休業損害が認められる場合は,就職の時期や収入金額をどのように判断するのかという問題があります。この点について,実務的には,就職の時期を考慮することなく,事故時から治療の終了までの全期間としたうえで,収入金額を低めに設定することにより,妥当な解決を図る傾向にあります。